インタビュー
はらっぱカレー店
オーナーシェフ
石部 樹未Tatsumi Ishibe
新篠津つちから農場
代表取締役
中村 好伸Yoshinobu Nakamura
Profile
石部 樹未

東京都府中市出身。野外フェスで出会ったカレーに衝撃を受け、都内の会社に勤務しながらカレー作りを学ぶ。
2013年、転勤で札幌に移住し、縁あって飲食店を間借りする形でカレー店をスタート。
2019年6月、「はらっぱカレー店」オープン。

力強い存在感と素直な味わい。
肥沃な土で、玉ねぎは自らおいしくなる。

スープカレーが主流だった札幌に「辛くないスパイスカレー」という新しい風を吹き込んだ「はらっぱカレー店」。他にはない奥深い味わいの土台となっているのが、つちから農場の特別栽培玉ねぎ「ねを」です。「食材選びは生産者への信頼があってこそ」と語る石部さんと中村の間には、深い絆が根付いています。

ぶれない味の玉ねぎがほしい。
模索を続ける中で「ねを」に出会った。

中村 石部さんとの出会いは、野菜ソムリエの知人に「おいしいカレー屋さんがある」と連れてこられたのがきっかけでした。スパイスをふんだんに使っているのになんとも優しく、滋味あふれる味わいに驚きました。

石部 当店は「みんなで食べられる辛くないスパイスカレー」がコンセプト。味の要となるのが、水を極力使わずに玉ねぎの水分を引き出す独自の製法です。チキンやキーマ、マトンなど種類によって玉ねぎの分量を使い分け、6種類のカレーをあらかじめ仕込んでおき、注文ごとに調理しています。オープン当初は「道産玉ねぎ」という大枠で捉えていて、近くのスーパーで買っていたんですが、カレーの味が毎週のように変わるんです。スーパーではいろいろな産地から玉ねぎを仕入れているため、味にばらつきが出てしまうんですね。常に安定した味を提供するために、「これなら」と思える玉ねぎはないものかと模索していた頃、中村さんが来店してくださったおかげで「ねを」に出会いました。

中村 石部さんのカレーは辛さや具材の多さで圧倒するのではなく、緻密に考え抜かれているのが伝わってきました。だからこそ大量に使われる玉ねぎの質が問われると思うと、下手なものは作れないなとその時改めて思いました。

ひときわ強いとろみと甘みは、
たくましい生命力の表れ。

石部 玉ねぎにも個性があるので、現在は中村さんをはじめ3軒の農家さんから玉ねぎを仕入れ、それぞれの良さが引き立つようにブレンドして使用していますが、その中でも「ねを」は、火を入れるととろみと甘みがひときわ強く出ます。うちのカレーは小麦粉を使っていませんが、玉ねぎだけで十分なとろみを出せるのは「ねを」の力が大きいですね。当店はテイクアウトやデリバリーもやっていますが、うちのカレーは冷めてもおいしく召し上がっていただけるのが自慢です。むしろ冷めると玉ねぎの甘みがひときわ強く感じられます。

中村 うちの玉ねぎをおいしいと言っていただけるのは、玉ねぎ自身の生きようとする力を邪魔しない結果だろうと思います。私たちは玉ねぎを育てる上で必要以上に手をかけません。すると玉ねぎは水や栄養を求めて地下深くへ根を伸ばしていきます。そんなたくましい生命力が、強いとろみや甘みとなって表れるのかもしれません。

石部 確かに力強い存在感がありますね。でもカレーの邪魔をするえぐみが一切ないのが不思議です。

中村 新篠津村は泥炭地なので、有機物が豊富で地力が高いんです。化学合成農薬や化学肥料に頼らなくても土地が良い玉ねぎを作ってくれるので、人間は成長しようと頑張る玉ねぎをほんの少し手助けするだけ。化学肥料の窒素が少ない分えぐみが少なく、素直な味になるのでしょうね。

生産者への信頼と、料理人への敬意と。
玉ねぎが結ぶ心の絆。

石部 中村さんが魂を込めて良い玉ねぎを作ってくれるおかげで、うちのカレーが作れます。特別栽培の玉ねぎでどうしても仕入れたいと思うのは「ねを」だけ。特別栽培は病害虫のリスクが大きく、なかなか踏み切れない農家さんも多いと聞きますが、生産者としてのプライドを賭けて「ねを」を作り続ける中村さんの姿勢に感服しています。

中村 うちの農法は新篠津村の土と玉ねぎ自身の生命力に任せている部分が大きいのですが、土の力と玉ねぎの力を信じているからこそ、日々の成長をそばで見守ることが大切だと思っているんです。だから前夜の就寝がどんなに遅くても、翌朝は必ず畑に出て玉ねぎの顔を見るようにしています。

石部 僕は食材と同じくらい生産者との信頼関係を大切にしたいと考えています。中村さんとはこれまでたくさんお話をして、農場の写真も見せていただき、「この人のもとで育つ玉ねぎなら大丈夫」と納得できました。

中村 私も同じ気持ちです。私は、自分たちが作る玉ねぎをおいしい料理に仕上げて消費者へ届けてくれるプロの皆さんを尊敬しているんです。特に石部さんのように将来の可能性を秘めた若いシェフと仕事ができるのは大きな喜び。「はらっぱカレー店」がこの先どんな風に成長していくのか、楽しみです。

収穫の現場をこの目で見たい。
今年こそは新篠津へ。

石部 有名レストランにも認められている「ねを」を快く使わせていただいている上、期待していただくことはうれしくもあり、身の引き締まる思いでもあります。店をオープンしてから1年あまり、忙しくてまだ農場に伺えていないのですが、今年こそは収穫に間に合うように伺わせていただきます!

中村 「ねを」が育つ環境と私たちの取り組みを見ていただければ、改めて納得していただけるものと思います。玉ねぎの収穫は8月〜9月が最盛期。いつでもいらしてくださいね。

Information

はらっぱカレー店

つちから農場をはじめ道内3つの指定農家から仕入れる玉ねぎをブレンドし、20種以上のスパイスで仕上げるスパイスカレーは辛くないのに奥深い味わい。カレーのベースとなる玉ねぎペーストの販売も行っています。

  • 住所:札幌市中央区南1条西11丁目327-19 下妻ビル1F
  • 電話番号:011-839-5780
  • 営業時間:平日11:30〜20:00(L.O.19:30) 
    土曜11:30〜17:00(L.O.16:30)
  • 定休日:日曜・祝日
  • HP:https://www.facebook.com/harappacurry/

とろとろ玉ねぎ(250g)
¥350(税込)